BSI(英国規格協会)、サプライチェーンリスクマネジメントの国際規格PAS 7000を発行
2014年11月4日
BSIは、このたびPAS 7000:2014「サプライチェーンリスクマネジメント –サプライヤーの事前資格審査に関するグローバル基準」を発行しました(*参考1)。
サプライヤーが、“誰なのか“ ”どこにいるのか“ ”信頼できるのか“ という3つの質問に対して明確にできるよう、サプライヤー評価の基本となるGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)の視点から細かくチェック項目を設定し、サプライヤーのあるべき基準を定義しています。
本PASの策定には、世界各国から様々な業種の40社以上の大手企業(*参考2)、選りすぐられた240名の専門家が参加し、あらゆる業種、規模のサプライヤーの事前審査が行えるような内容になっています。
これまで、サプライヤーのリスク管理に関して、企業ごとに作ったチェックリストや特定分野における業界基準などは存在しましたが、業種や規模を問わずに幅広い分野を網羅するサプライヤーリスクマネジメントの規格の発行は、世界で初めてとなります。
●サプライヤー管理における現状課題
PAS 7000が発行された背景として、近年重要視されているサプライチェーンのリスク管理において様々な問題が発生していることが挙げられます。
グローバル化が進み、国内だけで製造から出荷、もしくはサービス提供をするという時代は終わりました。各国に点在するサプライヤーの管理は、もはや企業の存続に欠かせないものになっています。
数多くのサプライヤーを管理するため、各社は独自でサプライヤー管理のためのチェックリストを作成し、監査を実施するなどの策を講じていますが、実際は自社のサプライヤーの数すら把握できていない企業も多くあります。このため、遠く離れたサプライヤーが食品偽装や不法投棄などの問題を起こした時に初めて、深刻な経営危機に直面することも少なくありません。
このような状況下BSIは、課題の解決に向けての第一歩としてサプライヤーの基本資格要件を定義する国際基準が必要であるとの意見を世界中で様々な方面から聞いていました。
●課題解決ツールとしてのPAS 7000
今回発行されたPAS 7000は、健全なサプライヤーを確保し、それらのサプライヤーから安心して調達を行うためのプロセスを効率的に行うことを目的に作られました。
サプライヤー事前選定のための一般的な要求事項を項目別に落とし込めるようになっていますが、その項目の軸となるのがGRC(ガバナンス・リスク・ コンプライアンス)です。サプライチェーンの管理に欠かせないGRCに関する情報について全サプライヤーから事前に情報を取得するために使用します。
また、PAS 7000は大きく「主要要素」と「追加要素」に分かれます(*参考3)。「主要要素」には、会社概要、従業員規則、環境マネジメントなど基本的な情報が網羅されています。一方、「追加要素」においては、トレサビリティや事業継続性など、より詳細な情報を得ることができ、あらゆる業種、あらゆる規模の企業様に対応できるような構造になっています。従って、例えば、一次サプライヤーと二次サプライヤーそれぞれの取引頻度や内容に応じて、使用項目を選択することも可能です。
一方、サプライヤー側にとっては、現在取引先ごとに異なる質問項目、審査項目に対応が必要であるという状況から、統一された国際規格に基づいて同じ手順で準備、対応を進めることができるようになります。これにより、サプライヤーの負担が減ると同時に、不適切なサプライヤーは排除されるため、本規格を使用することは市場の健全化にもつながります。
また、今後は世界中に散らばる多種多様なサプライヤーの管理ツールとして利用すると共に、GRC情報を集約したデータベースの構築も考えられます。このようなデータベースは、バイヤーとサプライヤー双方にとって、新しいビジネスチャンスを作っていく意味で非常に大きなメリットがあると言えます。
PAS 7000の活用によって、いままで企業がサプライヤー管理の一環として行っていた 「チェックリストの配布と回収」 の作業レベルから一歩進んで、「サプライヤーから供給される有益な情報の回収とその活用」 へとシフトされることを期待します。
*参考1:
PASは“Publicly Available Specification”の略であり、⽇本語では「公開仕様書」です。「⼀般に公開されて誰でも使⽤できる規格」であることを意味します。PASが国際的に広く活⽤された実績をもとに、BSIが国際規格とすることをISOに提案することで、PAS規格からISO化された規格がこれまでに多く存在します。PAS規格は、信頼できる公に認知された規格を作成したいという希望があれば、どのような組織(企業、政府機関、団体、NPO、学術機関など)でも作ることが可能です。世界の規格開発活動において多く利⽤されている“コンセンサス・ベースアプローチ”に基づき、BSI(英国規格協会)が⻑年の経験と実績に基づいて作り上げた規格開発のプロセスに従って⾏われています。
*参考2:
本PAS7000の開発にあたって、以下の企業様を含む計40社以上の企業様にご協力をいただきました。(ABC順)
日本からは下記の企業様の他、繊維業界と電子業界から大手企業様にご協力をいただきました。
- Achilles Group Limited.
- Altius Vendor Assessment Limited
- Astra Zeneca
- Brother Industries Ltd. (Brother Industries Ltd. )
- Builder’s Profile (UK) Ltd.
- Capita plc, Celgene Corporation
- Chartered Institute of Purchasing and Supply (CIPS)
- Dainippon Screen MFG. Co. Ltd.(大日本スクリーン製造株式会社)
- Defence Science and Technology Laboratory (Dstl)
- East Riding of Yorkshire Council
- Japan Audit and Certification Organization for Environment and Quality(株式会社日本環境認証機構)
- Japan Quality Assurance Organization(一般財団法人日本品質保証機構(JQA))
- London Underground Limited
- Metcash Limited
- Onward Kashiyama co. Ltd.(株式会社オンワード樫山)
- Osaka Izumi Co-operative Society(大阪いずみ市民生活協同組合)
- PICS Auditing
- Sanitarium Health & Wellbeing
- Sompo Japan Nipponkoa Risk Management Inc.(損保ジャパン日本興亜リスクマネジメント株式会社)
- Supply Chain council - Hong Kong
- Toyota Tsusho Corporation (豊田通商株式会社)
- Vendigital
*参考3
PAS 7000の要素は、以下の通りです。
◆主要要素
- 組織概要
- 能力
- 財務、保険情報
- ガバナンス
- 従業員規則
- 安全衛生
- データ保護
- 環境マネジメント
- 品質マネジメント
◆追加要素
- 企業倫理
- サプライチェーン トレサビリティ
- サプライチェーン セキュリティ
- 待遇の均等と結社の自由
- 懲罰の実行と濫用
- 事業継続マネジメント
BSIは、日本ならびに世界のお客様に対して、PASを策定して発行するサービスを提供しています。
昨今、自社に関係する業界あるいは技術分野の標準化を、自らリーダーシップを発揮して推進し、国際・国家規格を策定していきたいという機運が高まっており、また、製品・技術・サービスを適正に評価したいがそのための基準や規格が存在しないという課題も多く見られます。このような情勢を受け、BSIはPAS規格を民間企業から政府まで様々な組織から依頼を受けて開発しています。
日本国内でこのPAS規格策定サービスを行えるのはBSIジャパン唯一となります。
詳細は、下記BSIジャパンのホームページをご覧下さい。
URL:https://www.bsigroup.com/ja-JP/our-services/PAS-standard/
<PAS7000:2014の入手方法>
デジタル版は下記のWEBサイトから無料でダウンロードできます。
URL: www.bsigroup.com/PAS7000
製本版については、BSI SHOP(BSI英国サイト)から直接お求めいただけます。
URL: https://shop.bsigroup.com/SearchResults/?q=PAS7000
※日本語版は12月の発行予定となります。